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やけくそアップ→改め「花嵐」①/⑤ [捏造◆作文]

鬱々とした気持ちをぶつけた捏造作文、
時が時だけに、ちょっと狂ってるかもしれない、
第1稿まんま、いきなりアップです!

まだ完結してない、ラストシーンも見えないまま、
書いたら書いただけ、書いたところまで
校正もしないで乗せちゃうぞーーー(これぞヤケクソ)

ENDマークまで行けるなら甘々ハッピーエンドは間違いないが、
明日のサン毎しだいでは、私が半月くらい鬱になるかも分からない。
完結のお約束はできませぬ……(・_・、)

ま~、下書きなんだな、ということで[たらーっ(汗)] どうぞお目こぼしを……

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 ざああああ。

 音ではなく気配。贅沢に重く重なり合った満開の桜花は、春の嵐に吹き嬲られても葉群れのように悲鳴は上げない。
 寒さの中を耐え抜いてようやく開き初めた桜は、十分咲きに見えても未だ花芯が色付かず、総体として蒼白に見える。そうした桜は、風にも雨にも良く耐えて花弁を落とさない。
 開花期の終わり。花芯が紅く染まり、街も山をも薄紅の霞に沈める桜は、温んだ微風であってさえ花弁の流れと為す。触れなば落ちん。ほんの一撫でで花弁を振るい落とし、最後の一花を、狂おしく風の中に咲かせる。
 その際も、やはり音はない。
 薄紅の、花嵐。音のない嵐。

     
*     *     *
 

 東京都心。とはいえ、官公庁街からは程よく離れた副都心の、顔見知りがうようよ徘徊している中心部からも距離を取った辺り。宿泊客に徒歩によるアクセスを想定していない区外れのタワーホテルへ向かって、深夜の歩道を急ぐ雄一郎の肩にも、名残の花弁がしきりに降りかかった。
 ――今年も見損ねたな。
 職に就いてからの雄一郎の《花見》の記憶は惨憺たるもので、風に掃き集められて排水口を塞ぐ塊だの、路肩で踏みにじられた哀れな残骸だの、お堀に浮かぶ花筏……などはまだ風情のあるマシな部類で、公用車の屋根に張り付いた褐変した花弁に、時期が過ぎ去ったのを知っただけ、などという酷い年もあった。
 昼日中の満開風景こそ見損ねたが、花弁を含んで香りも華やぐ夜気に身を浸せただけ、今年は幸運なのかもしれない。
 自らの念頭に浮かんだそんな断片に気づき、雄一郎の頬がふっと緩む。
 ああ、そうだな。俺は今、浮かれている。


 呼び鈴に応えて開いたドアに身を滑り込ませると、室内の様子も目に入らぬうちに、馴染みの匂いに抱き込まれた。
「ゆ……」
 己の名も、待ち合わせ相手の名も、頭文字は「ゆう」。互いに呼び合うそれが、声になる前に唇が吸い合う。
 吐息にも混じり合う唾液にも、強くウィスキーが香った。
 ――珍しい。先に飲んどるんか?
 思考は一瞬。舌の根が軋むほど強く吸われ、雄一郎の背筋に痺れが奔る。
 アルコール漬けのとろりと弾力を帯びた義兄の舌はいつになく乱暴で、まだ口元に留まりながらも、自在に雄一郎を翻弄した。夢中で絡ませ合う舌に息が詰まり、堪らず鼻から呼気を逃すと小娘のような喘ぎ声が己の耳に届き、居たたまれなさに全身がかぁっと煽られる。
 溢れ落ちた唾液が顎を伝い、喉を滑り落ちるくすぐったさに小さく震える。
 日頃は静謐な義兄の熱い喘ぎ音を間近に聞けば、一体どんな顔をしているのか無性に見たくなる。だが、目などとても開けられない。視覚のない薄暗がりの中に、噛み合う唇、ぶつかり合う歯、擦れ合う舌の表裏、頬の内側の粘膜、軟口蓋の感触を一心に追う。が、身の内で逸る鼓動が暴れ、呼吸が暴れる中、何もかも混乱して、それらの感覚のどれが己の弄ぶ義兄のもので、どれが義兄に弄ばれる自分のものか、まったく分からない。
 キス一つでこの有り様か。
 良い歳をして、と自嘲する余裕もない。
 力が抜けていく指で必死に相手の腕に掴み縋るが、すり合わされる膝が二人ともがくがくしているのに気がついた。
 何とまだドア前だ。三歩も入らぬアプローチの床のカーペットに揃って座り込み、ようやく呪縛が解けた。
 息を弾ませながら、しばし互いの表情を伺い合う。
 ドアに背中をつけたまま、先に雄一郎が吹き出した。
「顔見るのは久しぶりやな、祐介」
 笑い声に混ぜて、今夜初お目見えの挨拶。
「ああ、お帰り、雄一郎。仮寝の宿ではあるが、ともあれ」
 義兄の優しい声が返る。いつに変わらぬ、柔らかく穏やかな声音。しかし、その中の何かが、雄一郎のどこかの神経に触れた。
 ――祐介?
 微笑に細められた睫毛に煙るその目を、改めて覗き込もうと見返るが、
「上着くらい脱げよ。公園の側から来たのか? 髪も服も花びらだらけだ」
 知ってか知らずか、さっそく世話を焼き始めた義兄に追い立てられる形になって、視線は遮られた。
「あんたがそんなヒマ、くれんかったんやないか。部屋入るなり………」
 ぼそぼそ抗議する雄一郎の上着を取り、軽くはたいてハンガーに掛け、身軽く戻っては義弟の髪から花びらを摘み取りながら、
「君だって乗ってきたんだから同罪だ。――晩飯は? いくら何でも済んでるな?」
 楽しげに語りかける音楽的な声は、そのままハミングのようだ。雄一郎の先刻の危惧とも呼べない引っかかりは、宙に浮いてしまった。
 ――まだ送検したばかりで、神経が立っとるかな。
 そんな想念を浮かべてみる前に、義兄に肩を押されて奥へエスコートされた雄一郎の目は、客室に踏み入るなり飛び込んできた光景に惹き付けられた。
「うわ……」
 八潮のアパート全室より広い壁を覆う、磨き上げられた一枚ガラスは宝石箱をぶちまけた漆黒の闇に変じ、満面の星空が地上に墜ちたかという豪奢な夜景を映し出していた。
 林立するビル群は、金彩を施したあり得ない半透過性のラピスラズリの石柱。その足元に連なるナトリウム灯が、ファイヤオパールのオレンジ光を添える。一面の光彩の乱舞に、その其処此処にわだかまる緑地の闇が奥行きを与え、また、そこに必ずある桜群が街路灯を暈かし、仄かな微光を発する薄霞を棚引かせている。
 常にその最下層の裏通りを嗅ぎ回り、泥濘を這い回っている大都会が、上空から見ればここまで艶麗に視覚を魅するか。
 一種皮肉な思いにも駆られるが、虚飾と知れていても美しいものは圧倒的に美しく、雄一郎はひととき、声もなく見蕩れた。
 背後に寄り添っていた義兄が、肩から撫で下ろした腕を躰に回し、軽く締め付けてきた。肩に顎を乗せ、心地よく重みをかけてきながらに囁く。
「綺麗だろう?」
「ああ…、綺麗や」
「――誕生日おめでとう、雄一郎」
 もう目出度い歳でもないがな。だいぶ日が過ぎとるし。
 苦笑しつつも、そう言ってくれるのは天にも地にもこの男だけなのだと思うと、沁み入るように嬉しかった。
 口元が緩むでは済まず、顔面ごと崩れ落ちそうだ。自然に微笑えばいいのだろうが、どうしたら頬笑むことが出来たか、急には思い出せない。
 ケーキも乾杯も花束もなく、ただ二人だけ。でも幸せで。

 
 だから、雄一郎は気付かなかった。
 背後の義兄の目に差す陰りに。


                                    ◆「やけくそ②/⑤」へ続いてます!◆
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コメント 2

コメントの受付は締め切りました
青子

おはようございます^^



早朝から、くらくらですよ、げこさん・・・

  肩に顎を乗せ、心地よく重みをかけてきながらに囁く

想像したら頬がでろでろに緩んでしまったっ!
後ろから抱きしめてくるシチュエーション、好きです^^
義兄の鬱屈はなんなんですか?続きが読めることを祈るしかないですね・・・頼みます!女王!!(もう遅い)


衝撃対抗策として、日常生活をがんばってみたりしてました。
掃除、草むしり、不用品の整理・・・大掃除かい・・今日からしばらく魂抜かれてもいいように・・・。
今日は朝から夕方まで用事ありで(号泣!!!)
サン毎読めるのは(今回は買います)夜かな。夕方まできっと心ここにあらずだろうな~~~・・・

雄一郎が穏やかに微笑んで終わってくれたら。望むのはそれだけです。合田雄一郎には本当に本当に幸せになってもらいたい。あー、泣きそう・・・



山村の晩秋。茜色に染まる田畑。仕事を終えた綿シャツジーパン姿の雄一郎が、満ち足りた表情でヴァイオリンを弾いている。


頭に浮かぶ情景です。



では。気を確かに持って、最終回を迎えましょう。
by 青子 (2011-10-18 05:02) 

げこ

青子さま


おはようございます~(´_`)

良いですね、草むしりv
現実がツラいとき、土に触れにいくのは合田警部と一緒ですね!
(あちらは逃避的というよりはもっと攻めの姿勢なのかしら…)
キョダツ後の手当をしておくというのは前向きですわ、奥様!

それにしても、夕方まで用事ありは泣いちゃいますね(>_<)
気の毒すぎる~~!
せめて、夜までやたらなネタバレ書き込みしないでおきます。約束。
がんばって、夜まで耐えてくださいね(・_・、)

 
明日以降も、ココロ穏やかに、義兄弟捏造したいなぁ~。
今書きかけのネタ、クサい→痒い→最終兵器(?)おセンチ、と来て、
今度こそ色っぽいの!と挑戦するつもりなので……(^_^;)


満ち足りた表情の元ヴァイオリン刑事、素敵です……v
願わくは、やっぱりたった一人の聴衆が、駆けつけてきて聴いてるといいなぁ(^.^) 
おうちでご飯作りながら聴いてるんでも、いいなぁ(O.;)


by げこ (2011-10-18 07:41) 

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