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鍋の締めは? [捏造◆作文]

長い長い(←当社比)「花嵐」をついに[パンチ]やっつけた後は、さすがに疲れて
しばらく大人しくしておりましたが、またぞろ発作が……病気の虫が……(^"^;)

この鍋、飽和するまで砂糖がぶち込んであるんじゃないか? という
毎度バカバカしい掌編となりました~。
ご用とお急ぎでない方は、どうぞ一笑してらしてください(^人^) 一蹴でもイイですぅ~[かわいい]
……と、師走に言うかね、このアマ……[たらーっ(汗)]

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 明日は二人とも公休というので、ゆ~~ったりと羽根を伸ばしきった、久方ぶりの自宅水入らず逢瀬。

 近所のスーパーに、いい歳をしたバカでかい男二人で繰り出して、思いついた物を片っ端からカートに放り込んで仕入れてきた具材で祐介が仕立てた、ほとんど闇なべに近い水炊きを、だらだらと時間をかけて平らげ。仕上げに「なべの締めとしてはアリか?」と疑問を呈しつつも、祐介の土産のウィスキーを有り難くちびりちびりと舐めながら、早、夜半。
 びっしりと鍋の湯気が結露したガラス窓に、真っ暗な外の寒さを思い、二人で居る室内の温かさ、安楽さに、雄一郎の顔面は訳もなく脱力し、口許には困ったにやにや笑いが湧き上がる。
 ――あかん……、収まらん。
 誰も冗談ひとつ言っていない、きっかけも何もない、はた目には不気味であろう頬笑みが一向に引っ込まない。ああ、俺はえらく酔ってるぞ、と自覚はするが、だからといって何の足しにもなりはしない。締まりのない顔を祐介に曝すのが嫌で、卓の横にごろりと引っ繰り返った。
 酒が回るにつれて暑くなり、靴下も脱いで畳に投げ出した素足を、祐介の手がひたりと押さえた。「ん?」と見遣ると、こちらも良い機嫌で、うっすらと薔薇色を帯びているのがいっそう艶麗な祐介の美貌が覗き込んだ。
「今日もずっと外回りで疲れてるだろう。マッサージ、してやるよ」
「ええよ、あんたかて――」
 雄一郎の世話を焼こうと彼がいったん思い立とうものなら、当の相手がどれだけ固辞しようが、聞く耳を持つ加納祐介ではない。
「あ……っ、タ!」
 骨張った靱い指が足裏のツボをぐっと押さえ込むなり、心地良い痛みがビン、と来て、思わず声が出た。ひとしきり足裏を解した後は、ふくらはぎ、大腿、と這い上がって、裏返した躰の下半身に乗って、さらに腰、背中、肩、と続く。何が愉快なのか、くすくすと楽しげな笑いを零しながら、的確にして勤勉な祐介の手は休まない。
「ほら、筋がごりごりだぞ」
「あ、あ、あ」
 おっさん臭い…と若干情けなくはあるが、正直とんでもなく気色が良い。ぐんにゃりと力が抜けて、こうなると祐介の手に全身を委ねるしか出来ることはない。
 腹はくちいし、部屋は温かい。適度にアルコールも入り、とどめに、撫でさすり、揉み解す祐介の手が与えてくる甘痛い快さ。
 先手先手、何も口にせぬ先に万全に面倒を見て貰い、この歳になって同い年の男にいいだけ甘やかされて、この上なく安穏と弛緩しきった、この俺のていたらくは一体何なんだ――。
 最後の理性で一応自問を試みるが、あまりの心地よさに頭が全く働かず、とろりと眠気が差すばかり。
 ――抵抗なんか出来るもんかい。無理や…。
「可愛い………虎がネコになって、ゴロゴロ言ってる」
 膝枕をした頭上から、艶を帯びて低く響く声が、笑いを含んで降ってくる。
「腕っこきの鬼検事が猛獣使いか」
 眠気の中から揶揄してやると、
「こんな甘ったるい目をした猛獣使いがいるか」
 重怠い瞼の下からようやく見上げた貌の、包み込むように細めた目尻の皺が柔らかい。
「……鞭は?」
「いや、俺はアメ専門」
 と囁いた唇が、微笑む形のまま降りてくる。うっとりと迎え合ったと思うと、かぐわしいスコッチと祐介の甘い唾液が一緒くたに流れ込んでくる。ざらりと摺り合わされた舌の堪らない感触に、「ふ」と「ん」の中間のような鼻声が漏れた。
「助けてくれ………甘ったる過ぎて再起不能や」
「安心しろ。猛獣使いは、愛しの虎の非常用食糧希望だ」
 ご要望に応じて。体を入れ替えた虎は、大好きな猛獣使いを傷つけぬよう、細心の注意を払って優しく組み敷き、邪魔な布包装を前肢を使わずに剥けるものか試みる。
 袖口を咬めば心得た腕がするりと擦り抜け、襟を咬んで引っ張ると、さらりと服地を潜る髪を、笑い上戸の鳩のような含み笑いが追っていく。
 だが、窮屈な人間暮らしから自由になった裸身の猛獣使いは、実は彼こそが猛獣であった本性を顕し、獰猛な笑いとともに虎に襲いかかってきた。愚かな虎は、毛皮も矜持も何もかもを彼の手で引っ剥がされ、美味しく貪り食われて啼き喘ぐハメとなった。
 
 奔放な饗宴のデザートに、力なく投げ出された白い手が拾い上げられた。指先が丁寧に吸われ、弦だこをゆるゆると噛まれて、もう散々に翻弄されてへとへとなはずの背筋が、まだゾクリと疼いた。
「――勘弁してくれ………もう無理や…」
 息も絶え絶えの睦言に、くっくっと喉を鳴らして祐介が返す。
「にわかハスキーボイスの雄一郎も、色っぽくて可愛いな」
 ――可愛い、だとぉ。
 干支4巡目に入ったおっさんを捕まえて、一晩に何度連発すれば気が済むのか、祐介の言いぐさに鼻白むが、こちらの渋面の含意をしっかり解読しているくせに全く応えない祐介は、
「どんなに耳が痒くても逃げられないだろう、雄一郎。“可愛い”言っても逃げなくなるまで、先だっての風邪の時にしっかり馴らしたからな」
 と勝ち誇った。どうも、弱ってる時は逃げられないのを良いことに、抵抗する気が失せるまで無理やり連呼してやった、ということらしい。
「今は弱っとらんぞ」
 見とれ、朝には復活して逆襲したるからな~~…
「もう馴れたもんな? 次は何に馴らしてやろうか」
 日頃は怜悧に涼しい目が、濃密な流し目を作ってひんやりと撫でに来ると、何故か全身がぞわっと戦慄した。

 ――後生や、もう勘弁してくれ………


                                                ◆おしまい◆
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一難去ったら…で、要するに毎度お気の毒な運命の合田さんです(^▽^;)
またしても全然Xmasじゃありませんが、一応冬[雪]ネタだな、鍋だし♪

マンガ描画ソフトの封を切る前に、ちょっと寄り道……(^_^;)
歳食うと、最初の一歩がどうにも億劫で。でもペン画8枚ムダに出来ん、頑張らねば[あせあせ(飛び散る汗)]

年内に、あとどれだけ更新できるかなぁ。と、やっとそんなことを思います。
いや、「今年ツリー出てないじゃん!」ってついに皆が気付きましてね(´・ω・`)
今年も大掃除しないの?」っていつ言われるか、ドッキドキ[爆弾]の年の瀬です(爆)


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コメント 2

コメントの受付は締め切りました
りく

次の日がお休みということは、猛獣使いの調教(きゃ~)は
まだ続くということですか?

すいません。
祐介が徹底的に、べたべたに雄一郎を甘やかすのは、
読むの大好きなんですけど、
何故か自分ではまっっったく書けないシロモノでしたので(笑)
いやもう、ゴチになりました!という心境です。
by りく (2011-12-19 22:39) 

げこ

りく様 ……というか、おおっぴらに師匠とお呼びしたい!!o(>_<)o

貴HP別館でも某《完全なる…》を最も熱愛し、もう何回読んだか分からないくらい
携帯に入れて持ち歩き、ヒマさえ有れば人目を盗んで密かに萌えを補給して、
無味乾燥砂漠な日常をサバイバルしております!

あの濃密にして息詰まる、激甘かつ激痛の(…というのが私は何よりの大好物!!!)
他に代えがたい密室劇の奏で手にお言葉を頂戴し、感激に震えちゃいます!(>_<)

私はもう、オママゴトしか書けないモンで(^_^;) 平和にあまあまでイチャイチャ、
ってのばっかり、エンドレス堂々巡りしてやがりますけど、ウチの連中……

ちょっとした箸休めというか、息抜きにでもなれれば、ホント幸せです(^人^)

ご来訪、本当に嬉しいですv
あんまり嬉しくて、続編、ひねくり回して考えちゃおうかなぁ……/////(悶え~)
by げこ (2011-12-19 23:15) 

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