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一陽来復 [捏造◆作文]

Xmas準備(ついにツリーばっくれまくり)、大掃除(やる気が全く無い!!)、年賀状(は、力一杯どうでもいい。
だってTakamura同志はみんなネット友達、郵送なんか出来ないんだも~~ん!) などの年末諸々。

アンド、それよりもワタクシ的にはずっと比重がでかい、コマ漫画、Xmasトップ絵、青子さまリクエスト絵、
年賀状替わりの正月絵、合間に、何だか突如降ってくる捏造作文!と、凄まじい複線運転してますので、
ここ2,3日オーバーフロー気味です。今日もギリギリ! 今日中に間に合うかしら更新!?

明日はXmasケーキくらい焼くかなぁ、とか思っちゃうし。鶏足も買っちゃったし。
さすがに、ちょっと最近の鬼母は目に余る~、チビ達ごめん[あせあせ(飛び散る汗)]

その隙をついて明日アップ出来るとしたら、新しいトップ絵くらいかなぁ。下絵は出来てるんです[黒ハート]
このくそ忙しいのに、いつの間に……(^皿^;) 

さて、一日遅刻しましたが、本日の捏造小編は、冬至ネタです。
ウチも一式やりましたよん。誰かが風邪ひいたら、捏造どころじゃないもんね! 超真剣[パンチ](爆)
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 自転車で走らないでも、歩いているだけで耳や鼻がちりちりと痛む寒さだった。雲も月も残らず吹き払われて空っぽの、天底まで凍り付いた夜空の下、団地への道を独り急ぐ。
 靴の中の足先を狙い、地面から這い上がってくる冷気を蹴りつける。足取りが軽いのは、勤務中の隙をかい潜って忍び込んだ携帯メールで、今夜は暗い部屋へ帰らずに済むのを知っているからだ。
「お帰り」
 暖められた部屋の空気よりも先に、迎えてくれた義兄の柔らかい声にほうっと温もる。解凍状態が胸まで降りてきて、ひとりでない嬉しさが息を吹き返し、食卓でくつろぐ背中に歩み寄るなり、温かい耳に己の感覚のない耳を擦りつけた。
「うっ……わ、酷い返事だな」
「ただいま」
 義兄のびっくり顔に、くっくっと腹が痙攣する。
「寒かったろう。風呂沸いてるから、温まってこい」
 
 脱衣所に入ったところで、ふんわりと華やかな香りに気が付いた。
 ――入浴剤か? 何や祐介のやつ、珍しいな。
 何の気なしに風呂へ入ると、湯に浮いている包みの中に黄色い果実………。
「柚子か」
 なるほど、確かにこの香りは柚子だ。吸い口や添え物ではお馴染みだが、この果実の全体像からは遠ざかって久しかった。
 久しい――。昔は、丸のままの柚子の実の方が馴染みだった、な。雄一郎には、遠く思い出す光景があった。

 幼い日を過ごした小さな借家の近く、母と通りかかった空き地だったか道端だったか、そこに一本の樹があった。
「あら、柚子……、こんなところに」
 母の声に、雄一郎はその樹を振り返った。忘れられたような狭い日溜まりに、真冬にも濃い緑の葉をふてぶてしく茂らせた樹が、小玉の黄色い実をたわわに付けていた。
「そういえば、そろそろ冬至ね。柚子湯にしようか、雄一郎」
「ゆずゆ?」
「お風呂に入れるの。良い匂いだよう」
 何もかもが寒さと灰色に沈む一景の中、母の笑顔の眩しさに少年の腹からも笑いの火種がきらきらと弾け、その勢いのまま雄一郎は樹に向かって駆けだした。
「ぼくが取ってあげる!」
「あっ、待って」
 樹に伸ばした手を、慌てて追いついた母が掴み止めた。その必死の勢いに、雄一郎が驚いて見上げると、
「柚子の樹はね、すっごいトゲがあるんだから。有名なバラの棘よりもっと凄いの。手袋してても刺さるんだよ。危ない危ない」
 真面目な顔で言い聞かせながら、母は買い物袋からいつも持ち歩いている裁縫バサミを取り出した。
「それに、柚子の実は素手では取れません。枝がしっかり靱くて折れないから、鋏が要るのよ」
 雄一郎が目を丸くして見守る中、母の鋏がちょきん、と柚子の実を切り離した。はい、と渡された、小さな手のひらにもちょうど収まる固い実が、おひさまのような明るい黄色に光っていた。

「良い匂いに茹で上がったな」
 風呂から上がると、義兄が頬を緩めながらコメントした。
 自分の躰から立ち上る柚子の匂いが部屋じゅうに行き渡っているというのか、思わず寝間着の袖をくん、と嗅いで確認すると、何が可笑しいのか、その様を見てまた義兄が肩を揺らした。

 食卓にはうどんの隣に鎮座して、ほっこり炊かれたかぼちゃの煮物が待っていた。
「夜食じゃあまり食べられないだろうからな、これだけ」
「何なんだ、一体」
「今日は冬至。知らないのか? 冬至に柚子湯に入って、かぼちゃを食べれば、一冬風邪知らず」
「………」
 なるほど。風呂の中で甦った記憶とちょうどリンクして、一連のあれこれが腑に落ちた。それにしても―――
「それでこれだけ用意してくれたんか。店、まだ開いとったんか?」
「いや、かぼちゃは家にあったんだが、柚子は事務官が部内に今朝配布したんだ。一同、一山越すまで風邪はならじ、との厳命付きでね」
 少々呆れて訊ねれば、一応それなりの応えが返ったが、それにしても今日も今日とて過酷な残業後にわざわざ。毎度感心するやら呆れるやらだが、つくづくマメな男だ。
「なんや。俺らが周年行事で祝うんなら、冬至よりイブの方と違うんか」
 冷やかし半分に混ぜっ返すと、意外なことに義兄の端正な白面がさっと赤らんだ。へぇ……?
「俺にとっては、冬至も大切な日だ」
「冬至が? 何でまた……」
「お前の退院が、冬至当日だったんだよ。覚えていないだろう」
 言われて初めて思いが至った。至ったが、だからなんで冬至……?
 よっぽど疑問符を顔にしこたま貼り付けていたのだろう、義兄が問わず語りを始めた。
「冬至の別名を一陽来復、というだろう」
 夜が一番長い日。それを逆手に取って、逆境や不運が幸運に転じる日、と言祝ぐ呼び名だ。
「これでどん底は過ぎた。あとは良くなる一方だ、というのが、あの頃の俺には実はけっこう救いだった」
 何と珍しい。遠く過ぎたことにしても、苦笑しながらに零されたこれは、義兄の弱音か。
「どんなこじつけでも、くだらないジンクスでも、何でも有り難かった。お前のことがどれほど心配でも、もう近寄れないと思っていたから。もう二度とこの目で顔も見られない、電話越しの声も聞けない」
 自分が入院病棟のベッドの上で慚愧に身を捩っていたのと同じ日々、義兄はそんな思いで過ごしていたのか。初めて聞くかもしれない述懐に、胸裡がぎりりと締め上げられ、息が詰まった。
「――そうしたら、手紙が来たんだよな……」
 ため息のような声が漏れるのと一緒に、自らの手元に降りていた義兄の視線が、這い探した雄一郎の目に帰ってきた。その双眸に、帰途に見た夜空の底知れぬ群青を想起して、背筋が氷で撫で上げられたように痺れ、雄一郎は言葉もなく戦いた。
「冬至のおかげ、みたいな気がしたんだよ」
 にこりと微笑んでオチを付けた義兄の表情に、ふと落ちた刹那の呪縛が解けた。
「アホウっ、散々悩んで書いたんも、必死の思いで投函したんも俺や!」
 気が付けば、柚子の香りに包まれて、暖かな居間に二人。
 ――ああ、どん底は確かに過ぎた。幸いなことに。
「ほんまアホやなぁ、俺ら。いい歳して」
「まあ、終わりよければ――」
 身を寄せてきた義兄の目は穏やかに潤んで輝き、もう凍り付いてはいない。互いの目に目を合わせ、吐息が混じり合う距離で安心して閉じる。その唇に唇だけを感じるため。


 冬至の夜は、一年で一番長い。
 ということは、朝は一年で一番遠い。
 雄一郎がそのことを思い知ったのは、さて、寝もやらずに何回泣かされた果てのことか。

 一陽来復。春にはまだ少し遠い日のことである。


                                                ◆おしまい◆
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タグ:蜜月期 八潮
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青子

ついにイブです。
P活動と夏以来(笑)放りっぱなしだった諸々雑事をまとめて片付け、
さあ、楽しいイブ妄想!と思ったら、冬休みですよっ><
くうぅぅぅ~~~~~っ・・・坊主どもにPC独占され、ゆっくり本も開けず。これが20日も?(号泣~っ!!!)

22日は冬至でしたねぇ。うちはかぼちゃもゆず湯もしませんでしたが。ははは^^
雄一郎とお母さんのエピソード、いいですね。
合田母子、きっと仲が良かったんだろうなぁ。
雄一郎、お母さんのこと大好きで、大事にしてたんだろうなぁ。
と、義兄弟妄想しながら母子妄想もしてしまうわたしです。
実は晩秋のころ金木犀をネタに母子の妄想をしてまして、なんか想いが共鳴したようで勝手に喜んでます(図々しいっ)

義兄も珍しく素直だったりして可愛いっ…と思ったら、最後はやっぱり・・・なんですね。ふっふっふ^^

どうぞ無理なさらずご家族優先で。単線運転で^^
楽しいクリスマスをお過ごし下さい。
by 青子 (2011-12-24 07:33) 

げこ

青子さま!

な、何というア~リ~モーニングにコメントが!! と、びっくり(゜ω゜)したら、
なるほど、いずこも同じ、そういう訳でしたか(笑)

ウチも、手持ちのソフト全クリしたチビどもが、いっときディズニーなんかの無料サイトの
チャチいゲームコーナーにハマりやがって、おっそろしくPC作業の邪魔してくれたことが(`ε´)
Xmasプレゼントで新しいソフトが来たので、ようやく解放されましたが!
でも、三食おさんどん&プライバシー確保は深夜だけ、ってのが半月続きますね~(>_<)ウエ~ン

金木犀なら秋ですねv どんなお話なんだろう……
盛りの花も綺麗ですが、地面をあの柔らかいオレンジ色に染めて散ってるのも素敵。
樹の花、大好きなので、合田さんと金木犀の取り合わせには恍惚としちゃいます~( ̄∇ ̄)
樹ネタ、ウケて頂けて嬉しいです。何を見ても義兄弟ネタ、シンクロシンクロ♪

合田さん、きっとマザコンだろうからなー。男のマザコンはもう仕方ないけど!
…と、男子の母は言うのかもな(^_^;)
日々公然と「雄一郎!」と呼びたさに、もし今夏以降に生まれたんだったら、
宅のチビに「雄一郎」って名付けたくなっちゃったかも……? まあ、
宅のアホがきなんかに付けたら後悔するのは自明ですから、ゼッタイしませんけどね(爆)

義兄がいつにも増してちょっとアホウで済みません、義兄ファンの方!!
(……義兄ファンは、ウチにはご来訪いただけてないかもなぁ~…)
合田さんの一挙手一投足が可愛くて可愛くて笑っちゃうの。そりゃーまんま俺か?(^_^;)

これからケーキと鶏足と焼きま~す! デコレーションは長女に丸投げ。
私は焼きっぱなししかしないんで。
で、腹一杯にしたらさっさと寝かせて、夜中は妄想三昧や!o(^皿^)O



by げこ (2011-12-24 08:39) 

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