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後朝(きぬぎぬ) ~「花嵐」翌日譚~ [捏造◆作文]

我が記念すべき2011年の、捏造納めですぅ~[黒ハート]

ほんっと、今年最後の夜が明けるというのに、節電で寒さにガタガタ震えつつ、
掃除もお節も何もかも打っちゃって、何やってんでしょーねー、アタシはっ! 
ああ、ホントに狂ってる!!
でも幸せだぁあ~~~~(>_<)

合田さん、義兄、愛してるよっ! 女王、心より敬愛申し上げております!!
来る歳も、最愛のあなた方の上に、祝福と幸運が雨あられと降り注ぎますように。 

それから、お訪ね下さる同志の皆々さま、感謝してます!
また来年も、ぜひ遊びにいらして下さいね(^_^) いつでもお待ち申し上げています。
良いお年を!

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 巷では春も盛りを過ぎつつある中で、時ならぬクリスマスイブ再び、という秘めやかな騒ぎの翌日である。


 某タワーホテルでの延泊2日目。
 祐介はすこぶる幸せそうに、デレデレと雄一郎の看護と世話焼きを満喫していた。
 おっつかっつの体格の想い人を抱いて運ぶのはさすがに断念したが、くだんのジャグジーバスで丁寧に体を洗ってやり、ベッドまで連れ帰って、新しい寝間着を着せてやり。
 執事ごっこかママゴト遊びよろしくかしずかれる雄一郎としては、すこぶる付きで居心地が悪いのだが、終始崩さない渋面でいくら睨みを効かせても、相手の蕩けるような笑顔には何の影響も及ぼせない。どんな一挙手一投足も目で舐めるように愛でられていると、自分が蒐集家秘蔵の宝飾品か骨董品にでもなったような心持ちになる。
 いささか情けないような思いで呆けていると、服を着せかける義兄の手が止まっている。何の気なしに背後を振り返ると、
「お前、前面は壮絶に傷だらけなのに、背中きれいだなぁ!」
 と率直に感嘆されてしまった。
「やかましいわボケ! さっさとソレ寄越さんかいっ」
 服を引ったくりざま罵倒してやるが、不覚にも顔が瞬時に熱くなるのが分かった。く……そっ、昨夜の今朝でそうそう立ち直れるか!
 祐介の方は、大事な義弟の体を冷やさぬようにと慌てて着付けを続行するが、服地越しに触れ合った手に、ふっと視線を落とした。
 そうなって今さら、ベッドの上で、完全に昨晩の再現で義兄の腕の中に収まっている己に気付き、雄一郎の鼓動がぎくんとリズムを外した。再びはたりと停止した義兄の手が、甘い拘束を作ってこの身を絡め取ろうかと迷っているのが、ありありと感じ取れる。背後から伝わる熱い体温と動悸が、こっちの拍動にまで勝手にシンクロしてくる。
 緊張の一瞬。
 だが、寝間着のボタンを優しく留めただけで、その手は離れていった。つい見送る形になった雄一郎の目には、ちょっと悲しげに眉をひそめた義兄の苦笑が残された。
 ――何や。俺は別に怖がってなんかおらんぞ。
 知らず唇を尖らせつつ、何だか申し訳ないような気もする雄一郎だったが。

「ほら、あーーん」
「…………」
 ――誰や。コイツに申し訳ないとか、一瞬でも思ったアホウは!
 ルームサービスで取った昼食を、甲斐甲斐しく食べさせたがる義兄は、もはや単なるワガママを押し通そうとしている自分を隠すつもりがない。いや、ここまで来るとすでに羞恥プレイの域に入るのでは……。疑念すら抱く雄一郎を余所に、清涼な笑顔を添えて口許に押しつけられる箸は一歩も退かない。
「……雄一郎?」
 ――ええい! 確かにこの悲惨な全身倦怠の現状は、一重にコイツのせいやっ!
 やけくそで開けてやった口に、選び抜いた美味が一口、いそいそと差し入れられる。忍の一字で黙って咀嚼を始めると、義兄が世にも嬉しそうに相好を崩した。

 世にも小っ恥ずかしい、これは新手の拷問かという昼食がようやく終わり、それでも腹がくちくなって雄一郎がうとうとしていると、義兄はスプリングコートを羽織り、外出する様子である。
「……仕事?」
「いや、ちょっと野暮用。暗くなる前には戻れるだろうから、大人しくしててくれ」
「一人で騒ぐかボケ」
 憎まれ口で送り出した背中が、いったん出て行きかけた踵を返し、ベッドサイドまで戻ってきた。
「忘れモンか?」
「ああ」
 怠惰に枕の上から見上げた雄一郎の片手を拾い上げ、長身をそっと屈めた義兄の唇が、その指に恭しく口づけた。
 ――な……っ!!!
 あり得べからざる状況に思わずド赤面しつつも雄一郎が反撃に投げつけた枕をひらりと躱し、してやったりと満足げに笑いながら、「回収完了♪」と義兄は部屋を出て行った。
 閉じられたドアに向かって無益に歯軋りするうちに、義兄の軽やかな笑い声の余韻も消え。
 ふと、身裡に降りた雄一郎の眼差しは、一転して切なげな色を帯びた。
 ――あいつの中では、俺はどれだけ綺麗で不可侵なんやろな………
 18年もの間、手出しも出来んくらいにか。
 ――アホかっ、干支3周余りのおっさんやぞ! 腐れとるわ、あいつの目! いや、イカレとるのは根性か。
 あのド変態に相応しい異常箇所を乱暴に決めつけると、雄一郎は我が身に布団を巻き付け、束の間の休息でも回復に専念しようと努めた。

 夕刻、部屋に戻ってきた義兄は、驚いたことにビロード張りの小箱を携えていた。見るなりイヤ~~~な予感に襲われた雄一郎だったが、それを手渡して「開けろ」とせっつく義兄に抵抗しきれるほどの元気も根気も、今の彼には到底ありはしなかった。
 もちろん、小箱の中からは、銀色に光る指環がお出ましだった。
「何やコレ……」
 力なく呟く雄一郎に、
「ステディ・リングとでも。ここをチェックアウトする時まで、付けててくれないか」
 全開笑顔の義兄は、開き直ったのか堂々のおねだりモードである。
 ベッドに半身を起こしたまま固まった雄一郎の手を両手で大切に掬い取り、手のひらに口づける。もう雄一郎は笑えなかった。
「……なんでステディ・リングが一つなんや。普通ペアでやるもんやろ」
「ペアで付けたい?」
「どアホ!!」
「俺はお前にしか欲情しないから、リングでの誇示もガードも不要だ」
 自信満々に言い切る美貌に、顔中に「疑わしいぞ!」と書いて示してやる。
「何だ、疑うのか?」
「当たり前だ。そんな場数も踏んどらんくせに――」
「修羅場なら何度かくぐらされたぞ」
 それは初耳だ。思わず身を乗り出したのが伝わったのか、義兄が得意げに見えないこともない不敵な笑みを片頬に浮かべた。
「思い余った“美女”に犯されかけて、ゲロ吐いたおかげで難を逃れたことがある。ちなみに、本物の女とニセモノの女と両方吐いたから、性別の問題じゃないぞ」
 これには咄嗟に絶句するしかなかったが。
「世間で喧伝されてるほど、擦れば何でも勃つってものでもない証明だな」
「あんたは人類の例外や」
「いや、1対1のパートナーシップが堅固な種ほど、進化生物学的見地では――」
「オス同士って時点で生物学的見地からは逸脱しとるわ。自覚しろアホウ」
「まぁだから、俺は不要なんだって。本当は、お前には虫除けに常時着用していて欲しいところなんだぞ。ヤの字だのK視庁だの、お前の周りには虫がうようよしてるから」
「何やそりゃア……」
 アホ話をしながら手すさびに指環を弄くり回していると、内側に何か彫ってあるのに気が付いた。
 ――“to Y” ………まさか、オーダーか…?
 呆れたことに、リングの内側に、わざわざ外からは見えないように極小さな石まで嵌めてある。
「げ…っ、何だコレ……」
「ダイヤ。お前、自分の誕生石も知らないのか? 護身の御守りになるんだそうだぞ」
 苦笑しながら雄一郎の髪をかき混ぜた手がひょいと指環を奪い去り、くいっと把持した左手の薬指につと填めた。
「ぴったりだな」
 ……そんなこと一つが、あんたはそんなに嬉しいか。そうツッコミを入れたくなるほどの、それは満面の笑みだった。

 
 その夜は打って変わって、何もせずに、ただ抱き合って眠るだけの2泊目となった。
 抱き込んだ雄一郎の髪に鼻先を埋めて、幸せそうに微笑む祐介の寝顔を横目に、雄一郎は夜更けまで長く考え込んでいた。

 翌朝、「もういいぞ」と指環を回収しようとした義兄から、雄一郎は手首を引ったくり返した。
「いや、気に入ったからもろて帰るわ」
「変に気を回すな。あの家に置き場なんかないし、付けるなんて冗談じゃないだろう。単なる思いつきの遊びなんだから、俺が記念に貰っておくよ」
「俺の誕生日プレゼントやろが」
 義兄がびっくりしたように目を見張った。よほど意外な言いざまだったと見える。
「俺はもう、祐介に先に《ステディ・キー》をやっとる。こいつはそのお返しや。貰う権利がある」
 ――合い鍵…! と悟って、まだ指環を取り返そうとしていた義兄の動きが凍り付いた。
「あんたの鍵も寄越せ」
 財布の中から掠い取った官舎のスペアキーを、自分のキーリングに付け、そこに指環も取り付ける。
「これで失くさへん。これも一種の“後朝”ってやつかな?」
 己の発案に満悦し、ニヤリと笑って示すと、義兄が感極まったように抱きついてきた。
「雄一郎……っ」
「こらっ、これからこの足で直出やねんぞ! エエ加減にせえボケ!!!」


 その日の各々の職場にて。
 部下と事務官とがそれぞれ、
「何か良いことあったんですか、係長?」
「何か良いことあったんですか、検事?」
 と問いかけて、
 片や、「何や?」とギロリ睨み付けられ。
 片や、「何でもないよ」とにっこり微笑みかけられ。
 …ああ、春だなぁ……、と思ったとか思わなかったとか。


                                            ◆めでたし、めでたし◆
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本来“きぬぎぬ”とは、二人分の衣類を掛けて同衾した男女が、翌朝それぞれの衣類を着て別れる、
その各々の衣類のこと。転じて、情事の翌朝のこと。その朝の別れのこと。だそうですが

一瞬、別れがたくて、二人で服を取り替えて帰るのかと思いましたよ~。なら色っぽいけど、
身分や性別で衣類の着用ルールががっちり定まった平安期にソレはあり得ないって(^"^;)

祐介が過剰にロマンチストで、ちょっと女々しくてすみません[あせあせ(飛び散る汗)]
相~~当~~に無理があり過ぎる設定なのは重々承知なんですが!
きぬぎぬ代わりに、鍵を持ち合って帰る義兄弟を書いてみたかったんです……[黒ハート]
嘘八百だけど、甘々な二人を書けて幸せでしたぁ~( ̄∇ ̄)

来年も、寛大なるヌル~いお心で、度重なる捏造をご容赦頂ければ幸いです[あせあせ(飛び散る汗)]
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