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温泉バカンス〔1〕到着編 [捏造◆作文]

捏造作文の4作目。

ちょっと……、どうしましょう。半日もかからないで、書き上げるなりアップです。
まだあんまり見直してないぞ~~~(^"^;)
もう多分そうは大きく動かないだろうけど、ちょこちょこと目立たないように手直しするかも[たらーっ(汗)]

湖北じゃないけど、温泉旅館へやってきた義兄弟の休日です。
何日かこのネタで爆裂[どんっ(衝撃)]してましたが、ついに激萌えが暴発[爆弾]だぁ~!!!(>_<)[黒ハート]

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「雄一郎」
 背後からかかる苦笑を含んだ低い声を、背中で切って捨てる。
「雄一郎、謝るから」
 聞くものか。もうこれ以上の生き恥は御免だから、煮えくりかえる怒りも情けなさも、断じて表には出さないが。それでも、飴色に磨かれたどっしりとした木の廊下に、憤然とした足音が響いている。
「不可抗力だった、って言ったろう」
 だんだん義兄の声がぼやき調になるが、一切顧みずに階段を上る。
 渓流沿いの狭い傾斜地に建てられた旅館は、いくつかの棟が渡り廊下で繋がれ、複雑な造りを反映して小さな階段や曲がり角が多い。気を付けないと館内で迷いそうだ。
「いつまでも怒っていると、一泊なんかすぐ終わってしまうぞ……」
 日頃は朗々と良く通る声が、ため息混じりで切々と取り縋ると、前を行く小さな背中が「ぷっ」と吹き出した。
「もう誤解は解けましたから、どうぞお平らに」
 先に立って部屋まで案内してくれている仲居が、微笑しながら義兄に口添えする。くそ。女を味方に付けやがって。
 いかにも信頼厚い二枚目づらは、その必要がない時は不思議なほど影のように目立たないが、当人がその気になりさえすれば、周囲の人心操作などお手の物だ。あまり前面には押し出さないが、実は器用な世渡り上手で、持ち前の知的なユーモアと話術は自在に人を惹き付け、それに上品で端正な美貌が乗っかっているのだから無敵だ。だが、それらを要不要で完璧にコントロールしているところが腹黒い。
「はあ…。どうも、本当に色々とご迷惑を……」
「いいえ、此方こそとんだ早とちりで騒ぎ立てまして。お二方ともご無事で安堵いたしました」
 仕方がないから、入館してから初めて口を開いたが、背後は断固無視だ。仲居は如才なく謝罪を受け入れてくれたが、今さらながら顔がかっかと茹だってくる。
 小さな橋のような渡り廊下をもう一つ渡ったところで、ようやくこの一種苦行と化した短い珍道中が終わりを告げた。
「お部屋は、こちらの特別室になります」
 仲居――シンプルな作務衣に洋風のカフェエプロンという瀟洒なお仕着せが語感にそぐわないが、他に呼び方を思いつかない――が先に通してくれて中に入り、思わず室内を見回す。

 ここまで、囲炉裏を切ったフロント前といい、一部は明治期の建築をそのまま使っているという館内といい、鄙びた秘湯というに相応しい風情だったのが、ドアを開けた途端にがらりと雰囲気が変わった。
 冬には本物の火も入るらしい欧風の暖炉前に、洗練された調度を従えた重厚なテーブルセット。吹き抜けになったその洋風のスペースを囲む、三段高い板敷きのリビングには掘り炬燵。ふんだんに取った障子窓からは、緑に染まった陽射しと森の香りが注ぎ込むが、視界はよく手入れされた小さな専用庭と渓流のみで、飽くまでもプライベート重視。
 室内階段で繋がった二階には、呆れたことに贅を凝らした書斎と寝室の二間があり、それらの障子窓は、前面は暖炉の煙突を囲む吹き抜けに、背面は森と渓流とに面している。
 ……一体なんぼ奮発したんや、祐介?
 すぐそんなことを考えてしまうのが庶民の悲しさだが、それにしても巧みに和と洋が調和しているものだ。
「お食事は、お時間になりましたら此方へお運び致します。ではどうぞごゆっくり」
 館内の施設と自慢の温泉について、手際良く説明して仲居が下がると、もう室内は二人きりとなった。
 部屋数の多い旅館ではないが、それにしても物音がしない。渓流のせせらぎの他は、鳥の声と葉擦れの音と森の気配だけ。東京から車で数時間の、北関東の山中とは思えない。
 常に心身から離せない緊張が、ゆるゆると解けていく開放感に任せ、思い切り伸びをしていると、上着ごと背後からすっぽりくるまれた。他人の目が遮断されるとすぐこれだ。
「雄一郎………、頼むから機嫌を直してくれ」
 許可もなく人に巻き付いてきた義兄は、顎を載せた己の肩から諦め悪くほざいた。――全く。

     *     *     *

 締め切った窓を叩く籠もった音で目が覚めた。がやがやと複数の人の気配が車を取り囲んでいる。
 ……車?
 ああそうか。祐介が運転するゴルフの車中で、ついぐっすり寝入ってしまったんだ。
 それにしてもここはどこだ。今はいつだ。
 車は、鬱蒼とした山林を切り開いた駐車場に停まっていた。木の間越しの陽は眩しくないから、浅くはない午後、夕方手前といったところらしい。
 ぼんやりと首を回すと、運転席に義兄も熟睡しているのが見て取れた。
 まだ半覚醒状態といったところだった己は、自分が目を開いて身動いだ途端、車外の人々が大いに反応したことに、全く気付いていなかった。…幸か不幸か。
「あの、大丈夫ですか?」「お怪我は?」「お連れの方もご無事ですか?」と、口々に掛けられる呼びかけの中身が段々聞き取れてくるにつれ、サーッと血の気が足元へ下がっていった。己の《生存》が確認されたことで、かなり緊迫度は下がっているにしても、車外のこの雰囲気は―――
「祐介!」
 ハンドルに突っ伏した背中をぐらぐらと揺する。が、相手の意識がゆらゆらと浮上するのを悠長に待っていることなど到底出来ず、肩を掴んでハンドルから引っぱがすなり、耳に大声を叩き込んだ。
「祐介っ、いいから起きろ! この野郎、宿に着いたら起こさんか!」
 この後の成り行きがありありと予想できるだけに、全身が刻々と煮えてくる。
 なんでこの渦中に俺一人正気なんや!?
 許さんぞ、祐介! とっとと起きろ!!

 最初にドアを開けて、車外の善良なる《救助者》の方々に事情を説明し、ご心配かけた旨詫びる時の苦衷を察して欲しい。
 車中の不審者の心中だか急病だかを心配し、帳場の仕事を放り出して駆けつけてくれた旅館の方々は、己が起きるまで随分と長いこと窓を叩き、声をかけ続けてくれたそうだ。目覚める気配もない尋常ではない喪心に、車中に練炭を目捜しし、重病による昏睡を疑ったというのも、このご時世では無理もない。
 もう少しで救急要請するところだったというから、本当に危ない瀬戸際だった。――己の社会的生命が。
 すんでのところで、宿帳には「公務員」で押し通した両者の職業の詳細までは、持ち出さずに済んだらしい。さもなくば、罪無き遭難を釈明するのは、とても不可能だったことだろう。事態への理解が進むにつれて、足元へ集まった血が己を見捨てて体外へ逃げ出そうとしている錯覚に駆られた。
「あまり気持ち良さそうに寝ているから、起こすに忍びなかった」と言い訳した義兄は、申し開きはこっちに任せっきりで、一歩下がって虫も殺さぬ微笑を振りまくだけだ。…この卑怯者……。
「まあまあ、お二方とも何日も徹夜でお仕事を」「ようやく取れた夏休みで」「ご兄弟で骨休めに。良いですねぇ~」「もうお彼岸ですけどね」「じゃあぜひ露天風呂へどうぞ、朝まで何時でも入れますから。疲れが取れますよ」 フェイクを含め(本当は「ご兄弟」じゃなくて「義兄弟」)適度に事情を漏らして、親切な方々にご納得頂き。
「一体どんなお仕事で…」などと、場の興味が横道に逸れ出す前にさっさと切り上げて、チェックインに向かった。
 義兄を待たずに、自分の荷物だけ持ってずかずかと歩き出してやる。無言のその背中から放たれる怒りのオーラに、聡い祐介はすぐ己の窮地を察したらしい。
「俺も、着いた時にはもう眠くて限界だったんだ」
 慌てて後を追ってきながら、哀れっぽく言いだした。
「お前も悪いんだぞ。高速乗るなりすやすや寝込んじまって。ずっと俺一人で、真剣に居眠り運転が心配だったんだからな」
 うるさい。検事の自己弁護なんか、聞いてやるか。
 熟睡中の己を気遣って音楽もかけず、初めての道を辿る義兄を想像し、自分だって激務続きで万年寝不足なのに、可哀想だったな…と、さすがに気がとがめる。が。
 だったら、着くなり己を起こして、速攻で宿に入れば良かったんや!
 なんでそこで一緒に爆睡するんじゃ! しかも、シフトレバー越しにしっかり手を繋いで!!!
 何かの錯覚だ、気のせいだと思いたいのは山々だが、生憎と己の記憶力は精確なること特別仕様だ。職務上常に役に立ちこそすれ、まさかそれを恨む日が来ようとは。
 車外の騒ぎに正気に返るなり、もちろん瞬時に振り解きはしたものの、それ以外に無力な己に何が出来ただろう。
 薄暗い木陰に留められた車のガラス越しに、外からは詳細は見えなかっただろう。人命が掛かったどさくさに、そんな細部に気を取られる素人はいないだろう。その推察が正解であるよう、今はもう祈るばかりだ。
 宿への緩やかな坂道を上りながら、俺はやけくそでため息を吹いた。

     *     *     *

 背後から回された腕の、己の胸の前で組まれた義兄の手を見る。
 遙々走ってようよう辿り着いた、温泉と畳の部屋を目前にして、薄情な義弟一人叩き起こせず。ずっとその手を握って寝てたんか。………どアホ。
「…せっかくこんな良い宿を探してくれても、奇行でブラックリストに載ってもうたら二度と来られんぞ」
 最後に一つだけ嫌みを捻り付けながら、宿の選択を褒めたことで遠回しに絶交解除を申し渡してやる。
 てらわなければならない他者が見える範囲から消えた時点で、憤慨する理由がなくなってしまったのだから仕方がない。…から赦してやるんや。…と、自分に言い訳する。
 そうだ。東京から数時間の道中とはいえ、僅か一泊の温泉行とはいえ、バケーションに浮かれているのは、何も祐介だけではない。
「きっと気に入ってくれると思っていた」
 本当に、こいつも職務柄、風向きを読むのは絶対的に得意な奴だ。機を見ると、即座に鼻の下を伸ばして調子に乗る。
 肩の上の顔が傾いて覗き込み、悪戯っぽい目がお伺いを立てる。素直に応えてなんかやらないが、目が勝手に瞼の下に逃げ込んで、祐介がさらに勢いづく。背後から己の頬を捉えた片腕を加勢に、悠々と唇を塞がれた。
 いそいそと滑り込んできた甘い舌に舌を絡めながら、今度は俺の方から、祐介の手を握り取ってやった。




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「おしまい」か「続く」かは、未定です(^"^;)

合田さんが義兄に困らされて、気の毒な目や恥ずかしい目に合ってさえいれば、
私はシアワセなので[黒ハート](ドS) 
そして、合田さんが好きで好きで堪らないが故に、歳甲斐もなくつい苛めて困らせてしまう
そんな人間臭い義兄が、可愛くて可愛くて堪らんのです。

だから、最終合体まで行かなくても、コレ止まりでも全然良いんですが……

とは思いつつ。
コレ止まりで良いなら、聖人だと思ってたのかクリスマスイブは空いてるか
要らんってことになっちゃいますからねぇー(こじつけ?) 

それに、それならオフィシャルがあんなスッゴい旅館を出してくる必要もないしなぁー(をい[あせあせ(飛び散る汗)]

迷ってます……(´・ω・`)[たらーっ(汗)]

タグ:蜜月期 温泉
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