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VWゴルフ前日譚 [捏造◆作文]

ついに、げこ初の二次創作(作文)って奴です……ガクブル[あせあせ(飛び散る汗)]

いくら義兄弟のシアワセ描写に餓えてるからって、何て畏れ多い!
ちょ~~ビビッてます。
……でも、ほんっと餓えてるので。マジ、餓死寸前。
もう捨て身で自給自足やっ[パンチ]

一人称も文章の視点も、お作法 全然分かりません!
           書き逃げっっっ[exclamation] ε=ε=┏( >_<)┛


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 久しぶりの公休日。両者揃って丸一日のオフなど、何時以来だろう。
 駅前の雑踏から頭一つ抜きん出た待ち人の姿を認め、祐介は密やかに安堵の息をついた。これでようやくホリデイ気分解禁だ。

 何の休日だろうが邪魔が入らない保証はないお互いの稼業ゆえ、もう慣れてはいるが。会えぬまま過ごした長の日々の仕上げとばかり、顔を見る瞬間まで会えるかどうか危ぶみながら待つ時間は、ただでさえ募る思いを、最後まで良いだけ煽り立てる。
 もっとも、知的に澄んで穏やかな面には、その胸裡を絞る甘苦しい痛みなど、微塵も表れてはいなかった。むしろ愉しげに見える端正な人待ち顔は、行き過ぎる女達をつい振り向かせる。それこそ、祐介には預かり知らぬことではあったが。

 遠目にも際だって背筋の伸びた長身が、軽い足取りで運ぶあと数歩を見守り、祐介の目は待ちかねたオフ日の最初の賜物を楽しんだ。
「助かった。今日は来られたな?」
「ああ、平和なる首都に感謝や」
「今日のところはな」
 挨拶替わりの微笑を交わし、連れ立って午後の陽射しの下に歩み出た。海に近い四車線道路を吹き渡る風は、まだ身の竦む冷たさだが、透明な陽射しは暖かい。
「どこ行くんや? あんたが今日は任せろ言うから、俺何も知らんで」
「どこだと思う? 当てるのは少し難しいと思うぞ」
 義兄には珍しい、気を持たせるような言い回し。いたずらっぽい含み笑いを、くすぐったく聞いた。
「楽しそうやな、祐介」
「ノーヒントで当てたら、晩飯は俺持ちだ」
「ふー……ん。魚河岸…は、時間が合わんな。場外ももう仕舞う頃合いや。浜離宮は方角違いやし。埠頭?…で何すんねん?」
 さすがは、年中靴底を減らして都内全域を駆けずり回っているだけあり、すらすらと候補を挙げていく。
「こっち側はもうビルしかないぞ。あとは空き地と高速ランプと……」
 カマを受け付けそうにない、余裕のにやにや笑いを横目で睨み、
「あかん。ハザードマップならともかく、ガイド系のネタはサッパリや」
 雄一郎は苦笑して、早々にギブアップした。
 追求が職分のくせに諦めが早い、と義兄が揶揄する。
 雑談を楽しみながらしばらく歩いて、ナビゲートしてきた祐介が足を停めたのは、ぽっかりと開けた交差点のたもとだった。
「…ここ?」
 見たところ、何の変哲も愛想もないオフィスビルに囲まれた街角だが。ここに、休日の時間潰しに相応しい何があるんだ?
「そう。ここがゴール」
 祐介が示したのは、大きなビルの一角を占める外車ディーラーのショールームだった。

「あんた、ええ度胸しとるな」
 あからさまに憮然としないよう、声は高からずセーブするよう気を遣いながら、雄一郎はこの場面に似つかわしい表情を検索し続けていた。が、自分が一体どんな顔をしていたら順当なのか、どうしても分からない。
「何が?」
 対照的に、義兄の方は悠然としたものだった。生活感というもののない飾り立てられた空間にぴたりと填り、いかにも上客然とした優雅さで、鏡のように磨き上げられたモデルカーの間を巡り歩いている。
「俺ら、傍目にどんなツレなんや。少しは気にならんのか」
「それは、家族連れや新婚にまみれていれば、多少は目立つだろうが」
 俺らしかおらんかったら同じことやろが、と雄一郎はボヤく。
 平日のショールームは確かにがら空きで、二人の他に客はいない。最初の慇懃な出迎えを、祐介が極上の笑顔で追い払ってからは、営業マンは呼ばれるまで近付かない構えで姿を見せない。それは助かったが、雄一郎の鋭敏な神経は、他人の興味を含んだ視線を感じずにはいられない。
 些細なことをガタガタ言いたくはなかったが、気付かないうちに自分は、旧態依然とした組織の中で硬直しているのだろうか。個人そのままで独立した司法機関である義兄の方が、精神は自由人というわけか。雄一郎の頭に、埒もない思考が浮かぶ。
「良い歳した外車マニアの男が、気の置けない友が愛車を選ぶのに便乗して、我が物顔で見物する図、だろう。微笑ましいじゃないか」
 いかにも楽しげな余裕ぶりがいっそ憎らしい祐介が、鮮やかに笑う。
「俺が乗るのはタクシーと捜査車両ばっかりや。外車なんかあるか、ボケ」
 雄一郎が飽くまでも毒づくと、
「俺が買ったら、お前の好きなだけ乗せてやるよ」
 返ってきたのは、蕩けるような視線を添えた、怖いような甘やかしの一言だった。普段は全き硬派を貫きながら、義兄は極まれに、予想だにしないこんな不意打ちを食らわす。長い付き合いの中での、ほんの何度目かのそれに、雄一郎は絶句した。
「そろそろ時間だ。試乗の予約を入れてあるから、君も一緒に選んでくれ」

 営業マンの最敬礼に見送られ、二人を乗せた試乗車は束の間のドライブに出た。埋め立て地の幹線道路は、見るべき景色もない代わりに閑散として邪魔するものもなく、走行は快適だった。傾いてきた陽が目に眩しく、暖色に染まった車内は暖かい。
「雄一郎?」
 ところが、走り出すと間もなく、助手席の義弟はがっくりと頭を垂れて爆睡に入ってしまった。
「一緒に選んでくれと言ったのに。わざわざ今日付き合わせた意味がないじゃないか」
 思わず苦情を呈した祐介だったが、信号停止の合間に身を乗り出し、その頭を抱えてそっとヘッドレストに凭れさせてやる。
 顕わになったその顔を、後続車がいないのを良いことに、ひととき眺める。見るだに眩しそうな西日の中でぴくりともしない睫毛を、相手が起きていれば決して許されない距離から、近々と覗き込んだ。
 所轄署に移って少しは楽になったかと思ったが、内面の自在な思考に応じて活き活きと色を変える瞳が閉じていると、その顔貌には疲労の影が濃い。目の下や痩けた頬の清潔な薄い皮膚が、微妙な血色を透かせていじらしい。
 日々の激務に耐え、犯罪者と渡り合う、並外れて強靱な心身を持ちながら、義弟の皮膚はこんなにも白く滑らかに薄い。
 それが彼の精神の繊細さそのもののように思えて、日々細心の注意で見守りながら、祐介は常にその身が案じられてならない。取り越し苦労だと自らに言い聞かせるが、その根拠は誰も与えてはくれない。
 祐介の目に刹那、苛烈な光が宿る。
 と、シルバーの車体は向きを変え、走り出した。

 髪を撫でられる感触に、雄一郎はぼんやりと目を覚ました。
 車内は薄暗く、物音もない。覚醒までの記憶が繋がらず、瞬時意識が浮遊する。ようやく、灰色に押し込められた空間が、地下駐車場らしいと察せられた。
「どこや……。こんな所、停まっててええんか? 試乗なんてやったことないから、よう知らんが」
「せっかくだから、車庫入れの使い勝手も試しておこうかと」
 しらしらと応える義兄だが、どこか余所事を考えているようで、反応がおっとりと鈍い。手だけが執拗に雄一郎の髪を撫で続けている。
 おい、いい加減に……、とその手を退かせると、
「うん。こんなことしてたら、この美しい車に申し訳ない」
 ふっと義兄の目が戻ってきて、真面目な顔を作った。
「捜査車両でだって、君は眠らないだろう?」
「寝るかアホ。勤務中や」
 つか、PC自体めったに乗れんし……、と一人でぶつぶつ言っていると、
「俺の隣で、君は安心して眠る。君を乗せて、俺はどこへでも行ける。実際になってみると、幸福過ぎてどうしたらいいか分からないくらいだ」
「……祐介?」
「このまま海へ沈んでしまったらどんな気分か。そう思いついたら、頭が逸らせなくなってな。海が見えない所へ逃げ込んだ」
 しばし無言で運転席を見つめ、雄一郎は「アホか!」と慨嘆した。
「あんたな、そんな事してみろ。水上警察と消防署と潜水夫とな、所轄と本庁だけでも面倒なのに、どんだけ横断して動かされるのか、知ってるのか?」
 身も蓋もないやっつけに、思わず祐介は笑い出した。
「ああ、そりゃ大変だ」
「お前、何のために車なんか買うんや。上司のゴルフの足か。また長い公休もあるやろ。今年の分の山、行けてへんぞ。こんな小洒落たコンパクトカーで、山の装備2人前、積めるんか?」
 雄一郎が畳みかけると、義兄の視線がコンクリ壁を貫き、遠い空に像を結ぶのが伝わった。
「…山……、か」
「温泉も行こう。疲れたら交代で転がして、眠くなったら……」
 祐介は、言い募るその口を掌で塞ぎ、義弟の肩口に額を伏せた。
「俺は大丈夫だよ、雄一郎」
 鎖骨から伝わる静かな声に、雄一郎は頬を緩めた。知らぬ間に入っていた肩の力を抜く。
「……たまにびっくりさせてくれるよな、あんたは」
 ふと零した自分の声音の甘さに瞬間うろたえて、そっと義兄の気配を窺うと、
「いけない、六時までに返さないと!」
 その頭が跳ね上がった。
「うわっ、いま何時や?」

 法定速度の許す限りの猛ダッシュで戻ったショールームから、二人は速やかに退散した。
 結局、義兄がフォルクスワーゲンに宗旨替えしたのは、「ちょっと安かったから」だけだろうか。
 どうも、何となく勘ぐってしまう雄一郎だった。


                                                ◆おしまい◆

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これって元ネタ本文、LJ単行本の

  「新車、買ったんだっけ」
  《ああ》
  「いつか、ショールームで見たやつか」
  《君と一緒に見たのはプジョーだ。あれと同じクラスで、買ったのはワーゲンの方。
  諸経費込みで、ちょっと安かったから》
  「へえ」

って7行ですよ。発言5つ。それでコレったけ自家発電。
Takamura中毒患者って、ほんっっとに燃費良い……つか、安上がり(^_^;)

途中まで、「クリスマスイブは空いてるか」以降バージョンで書いていて、
やばっっっ! 試乗時はまだデキてないどころか、義兄の片想いすら知らんハズやんか!
と気が付きました。マヌケ過ぎる……(^皿^;) 
慌てて書き直しましたが、疚しいこともないくせにちょっと自意識過剰な雄一郎は、
そういった次第です。  面目ない!

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コメント 1

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げこ

あああああ、疲れたぁ~~!
他人様の二次創作を読むのは、素晴らしく楽しいひとときなんですが、
自分でギツギツと書くのは何てタイヘンなんだろう……orz

祐介、凄まじくヘンだし(^皿^;)
いやよ、PCをお濠に、じゃなくて、試乗車を東京湾に、沈めちゃダメよ!
しかも、ワケのわかんない心中死体入り……ぎゃお~~~ん!!!

舞台は、晴海にある●ジョー中央ショールームです。
19時には閉まっちゃうので、わざわざお休みの日に出掛けないと実車は見られないのよ♪
最寄り駅、アクセス、営業時間に周辺スポット、すっごいワクワクしながら調べちゃいました。
義兄弟と仮想デェト!(ハイ、狂ってます、すみません……;^▽^ゞ)
by げこ (2011-09-16 09:41) 

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